<Header>
<Author: 杜甫>
<Title: 哀王孫>
<Format: 樂府詩>
<Year: 1988>
<BookName: 唐詩三百首詳解  上卷>
<Translator: 田部井文雄>
<style: 現代文無假名>
<style2: 日本現代譯文無假名標注>
<TranslatedTitle: 王孫を哀れむ>
<BookPage: 342>
<UsedPage: 1>
<Feature: 0>
<End Header>
<Poem>
長安城頭頭白烏，
夜飛延秋門上呼。
又向人家啄大屋，
屋底達官走避胡。
金鞭斷折九馬死，
骨肉不待同馳驅。
腰下實玦青珊瑚，
可憐王孫泣路隅。
問之不肯道姓名，
但道困苦乞爲奴。
已經百日竄荆棘，
身上無有完肌膚。
高帝子孫盡隆準，
龍種自與常人殊。
豺狼在邑龍在野，
王孫善保千金軀。
不敢長語臨交衢，
且爲王孫立斯須。
昨夜東風吹血腥，
東來橐駝滿舊都。
朔方健兒好身手，
昔何勇銳今何愚。
竊聞天子已傳位，
賢德北服南單于。
花門剺面請雪恥，
慎勿出口他人狙。
哀哉王孫慎勿疎，
五陵佳氣無時無。
<End Poem>
<Translation>
長安の城壁のあたりの頭の白いからすが、夜になって延秋門の上に飛んで来て鳴き立てている。さらにまた、民家に飛び移って、大きな家の屋根を口ばしで突っつき始めると、その屋根の下に住む高官たちは、禄山の敵軍を避けて逃走した。天子の黄金のむちは、激しく打ちふるわれてたたき折られ、天子の乗馬九頭も乗りつぶされるというありさまだったので、その親族でさえ、待ちうけて、天子と一緒に馬を走らせて逃げ出すことはできなかった。腰のあたりの宝玉は、青いさんごの玦の佩玉でありながら、かわいそうに、王族の貴公子が、道ばたで涙を流しているのだ。

わたしがたずねてみても、どうしても姓名を言おうとしないで、ただ「苦しみ困っているので下僕にしてください」とばかり言う。すでにもう百日もの間、
いばらの中に身を隠していたので、体中傷だらけで完全な皮膚はなくなっていた。だがしかし「高祖さまの御子孫は、すべて高い鼻をしておられ、天子の御血筋の方々は自然と世の常の人とは相違がある。今はやまいぬやおおかみのような安禄山の軍が都にあって、竜にもたとえられる天子はるかな田舎におられるありさまだ。どうか王孫さまよ、千金にも相当する貴重なお体を、大切になさってください」

都のはずれの四つ辻で、決してながばなしをすべきではないが、まあ、ちょっと、王孫のために、しばらくの間立ちとどまろう。昨夜、東風が東方の戦場の血の上を吹いてなまぐさく感じられたが、その東方から来たらくだが、今はもとの都となった、この長安にあふれている。わが朔方軍のつわものたちは、すぐれた体格と戦闘力の持ち主で、昔吐蕃を撃破したときには、あれほど勇鋭であったのに、今潼関に大敗した後は、どうしてこんなにおろかにも、敵の配下となってしまったことか。

わたしがひそかに聞き知ったことによると、天子の玄宗は、すでに粛宗に譲位され、その新天子御聖徳は、北方のウイグル王を説服せしめ、ウイグルはその誠意を示す風習のままに顔面を切り裂いて、わが唐朝の受けた恥をそそぎたいと協力を申し出て来たという。。どうかよく気をつけてそのことを口に出して
いうことはなさいますな。よそものから目をつけられますから。かわいそうな王孫よ、どうか気をつけて、軽々しくふるまうことなどないように。御先祖の霊のおわす五陵のめでたい気は、どんな時でも、なくなる時はないのですから。
<End Translation>